ビール醸造に使用する水は「醸造用水」と呼ばれます。ビールの成分の9割以上は水です。硬水・軟水といった硬度の違いは、ビールの品質に直結し、それぞれのビールの特徴に影響を与えます。
水の重要性と「水を磨く」理由
麦芽の製造、麦汁の製造、設備や容器類の洗浄、ボイラー用、冷却用など、ビール製造では多量の水を使用します。ビール1リットルを製造するために、約5~10リットルの水が使用されます。
ビールの成分の中でも、9割以上を水が占めているため、水の性質はビールの品質に直結します。ビール醸造で使用する水は「醸造用水」と呼ばれます。ビール醸造所では、飲用できる水であっても、ミネラル分を調整した「醸造用水」にします。この作業を「水を磨く」といいます。ビールのタイプによって求められる水質が異なるため、水を磨く作業により、そのビールに合った醸造用水にします。
水の硬度とビールの種類
水の硬度とは、水に含まれるカルシウムとマグネシウムの総濃度を示したものであり、水の一定容積中に含まれる酸化カルシウム(CaO)または炭酸カルシウム(CaCO3)の量に換算して表したものです。硬度が低い水を軟水、高い水を硬水といいます。
ビール醸造では、ドイツ硬度(単位:°dH[デーハー])が使用され、水100ml中にCaOを1㎎含むとき、その水の硬度は1°dHといいます。
一般に濃色ビールには硬水が適し、日本のような淡色ビールには硬度の低い軟水が適しているといわれています。ビールの種類に合わせて、水の硬度を調整する場合もあります。
硬度と硬水・軟水の関係をまとめると次の表の通りです。
ドイツ硬度(°dH) | 塩類濃度(㎎/L) | 水質 |
---|---|---|
0~4 | 0~70 | 非常に軟水 |
4~8 | 70~140 | 軟水 |
8~12 | 140~210 | 普通 |
12~18 | 210~320 | やや硬水 |
18~30 | 320~530 | 硬水 |
30以上 | 530以上 | 非常に硬水 |