ビール醸造に使用される麦は大麦が主流ですが、小麦から作られるビールもあります。この2つの麦の違いは何でしょうか。
名前の違い(「大」「小」に分けられたおもしろい由来)
英語では、大麦は「barley」、小麦は「wheat」と別の名称で表現されます。「Small barley」とか「Big wheat」という言い方はしません。つまり全く別の種として認識されています。この傾向はドイツ語でもフランス語でも同様です。では、日本語で「大」「小」と表現されるのはなぜでしょうか。その由来には諸説ありますが、一説によると古代中国に遡ります。古代中国では、米以外のイネ科の植物を「麦」と一括りにしますが、大麦と小麦の一番の違いは利便性です。大麦はそのまま飯や粥として食べられますが、小麦は製粉が必要で、さらに麺や饅頭に加工するなどの手間が掛かります。よって、古代中国では大麦の方が重宝されました。中国語で「大」は「本来のもの」「良いもの」という意味で使われます。したがって、大麦とは「本来の麦」「そのまま食べられる良い麦」という意味で命名されたと考えられています。
食品としての違い
食品としての最大の違いはグルテンの有無です。小麦の胚乳に蓄えられるタンパク質には、グルテンが豊富に含まれています。一方で、大麦にはこのグルテンがほとんど含まれていません。グルテンには粘りや弾力性を生む出す特性があります。グルテンによってパンはふっくらし、麺類は細長く成形できるのです。食の世界では小麦が大活躍していますが、ビールの世界では大麦が主役です。ビールの世界で小麦は脇役ではありますが、ヴァイツェンやベルジャンホワイトのように、小麦ならではの泡持ちの良さ、独特の酸味、マイルドで清涼感のある味わいを楽しめるビールもあります。