ビールの種類は「スタイル」と呼ばれ、発酵方法で大きく3つに分類されます。さらに原料や製法、香味などの特徴で分類すると、「スタイル」は150を超えると言われています。「スタイル」を知ればビールの個性が分かります。自分好みのビールを見つけるには、「スタイル」を知ることが一番です。また「スタイル」を知ればビールの世界が広がります。ここでは、代表的な「スタイル」をピックアップしました。
発酵によって異なるスタイル
ビールの「スタイル」は発酵方法によって、「上面発酵」、「下面発酵」、「自然発酵」の3つに分類されます。
「上面発酵」のビールはエールと呼ばれ、15~25℃で活動する上面発酵酵母によって作られるビールです。豊かな味わいと華やかな香りを特徴とし、じっくり味わう飲み方に適しています。歴史的には下面発酵より古くからあります。イギリスやベルギー、アメリカ系のビールに多いスタイルで、日本のクラフトビールもエールが多めです。
「下面発酵」のビールは長期間熟成を行う為、貯蔵を意味するドイツ語からラガーと呼ばれます。4~10℃前後の低めの温度で活動する下面発酵酵母によって作られるビールです。爽快で飲みやすいのが特徴で、ドイツ、アジア系のビールに多いスタイルです。日本の大手ビールメーカーのビールは、ほとんどがラガースタイルです。
「自然発酵」は主にベルギーで採用されており、醸造所の空気中に漂う野生酵母によって発酵が行なわれます。醸造所ごとに香味が異なり、フルーツなどを加えるタイプもあります。
上面発酵(エール)
ケルシュ
1986年に締結された「ケルン協定」によって、ドイツ・ケルン地方の限られた地域で作られたビールのみ「ケルシュ」と名乗ることができるようになりました。淡色系で白ワインのような独特な風味があり、爽やかな口当たりが特徴です。
アルト
「アルト」はドイツ語で「古い」を意味し、下面発酵(ラガー)ビールよりも古くから作られていることに由来します。銅褐色のビールでトーストのような香ばしさがあります。
ヴァイツェン
「ヴァイツェン」とは「小麦」のことです。小麦麦芽を原料の50%以上使用し、ドイツ南部のバイエルン地方で発展しました。淡色のビールが多く、泡立ち、泡持ちがよくクローブやバナナに似た華やかな香りが特徴です。
ペールエール
イギリスの伝統的な琥珀色のビールです。当時のビールはほとんどが濃色だったため、それよりも「淡い」という意味で「ペールエール」と呼ばれるようになりました。ホップ由来の苦味とモルトの甘み、フルーティーな香りがバランスよく味わえます。
IPA(インディアペールエール)
強いホップの苦味とやや高めのアルコール度数が特徴です。18世紀末頃、イギリスからインドにビールを輸送する際、劣化を防ぐためにホップを大量に使用し、アルコール度数を高めにしたことに由来します。
バーレイワイン
高いアルコール度数(8.5%~12.0%程度)と、6か月から数年という長い熟成期間が特徴のビールです。色は明るい茶色から濃い赤銅色です。どっしりとしたフルボディで甘みが強く、シェリー酒のような風味とフルーティーなエステル香が複雑に絡み合います。
ポーター
ホップの苦味とローストした麦芽の風味が特徴の濃色ビールです。その由来は、このビールが荷物運搬人(ポーター)に人気だったためとする説や、パブに樽が到着した際に「ポーター(届いた)」と声を掛けたためとする説があります。
スタウト
ロンドンで流行したポーターがアイルランドに伝わり、アルコールを強化して作ったスタウトポーターが起源だと言われています。麦芽化されていないローストバーレイを一部用いるのがポーターとの違いです。
ベルギーホワイトビール
麦芽にしない小麦と大麦麦芽を使用して作られるビールです。煮沸の際にコリアンダーシードとオレンジピールを入れてスパイシーな風味を加えるため、口に含んだ時に独特の甘く爽やかな香りが広がります。色は非常に淡く、グラスに注ぐと白く濁るのが特徴です。
セゾンビール
南部ワロン地方発祥のスタイルです。農民が夏の畑仕事の合間に飲むために、農閑期に自家製造していたのが始まりといわれています。色は黄金色から濃い銅色です。フルーティーで、ホップ、ハーブ、スパイスなどを効かせた個性的な風味が特徴です。
アメリカン・ペールエール
アメリカ産のホップがもたらすフルーティーな柑橘系の香りが特徴です。IPAほどの苦味やアルコール度数はありませんが、香りは強いものが多く、のどごしも心地よく、爽やかな口あたりのビールです。
アメリカン・IPA
ホップの苦味とフルーティーな柑橘系の香りが非常に強いビールで、アメリカン・ペールエールの進化版です。アメリカ産のホップと同等のフルーティーでフローラルな香りが出せれば、他の品種のホップを使うことも許されています。現代ビールの代表格です。
インペリアル・IPA
アメリカン・IPAよりさらにホップを加え、苦味と香りを強めたビールです。アルコール度数も高めで、しっかりしたアルコール感に、麦芽の風味が好バランスです。渋味やエグ味のないクリーンな苦味が爽快です。
下面発酵(ラガー)
へレス
チェコのピルスナーを手本としてミュンヘンで作られたビールです。色が淡く、苦味の少ないおだやかな味わいが特徴のビールです。
デュンケル
ミュンヘンで作られる伝統的なビールです。ミュンヘン・ダークモルトによるチョコレート、トースト、ビスケットを思わせる香りが特徴で、ホップの苦味より麦芽の風味を強く感じます。
ボック
ドイツ北部のアインベックを発祥とするアルコール度数の高いビールです。重厚な麦芽風味が特徴で苦味は弱めです。「ボック」の名称の由来は、アインベックの街の名前からという説や、飲んだ人が若い雄山羊(ボック)のように元気になるからという説があります。
ラオホ
煙(ラオホ)で燻した麦芽で作るバンベルク名物のスモークビールです。スモーキーな風味が特徴で苦味が弱く、コクが深いビールです。
ピルスナー
1842年にチェコのピルゼンで誕生した黄金色のビールです。ホップの効いた爽快な香味が特徴です。世界中で最も普及しているスタイルで、日本の淡色ビールも多くがこのスタイルです。
自然発酵
ランビック
空気中や木樽に存在する野生酵母を使用して作る自然発酵のビールです。レモンジュースに匹敵する酸味が特徴です。ブリュッセルとその近郊の一部以外で作られるものは正式なランビックとは認められていません。